抗弁権の接続により、クレジット会社への以後の支払いは拒絶することができます。しかし、消費者が既にクレジット会社にお金を支払ってしまっている場合、これを取り戻されなければ、消費者の完全な救済にはなりません。この「消費者が既にクレジット会社に支払ったお金」を既払金と呼び、既払金の返還請求の可否が大きな議論となっています。
抗弁権の接続は、悪徳商法業者に対する事由をクレジット会社に請求できますが、既払金の返還までは認められていないという考え方が支配的です。したがいまして、既払金の返還請求は、抗弁権の接続とは別の法律構成をとることになります。
「悪徳商法業者が実質的にはクレジット会社の代理人(もしくは使者)としてクレジット契約を締結しているから、悪徳商法業者の詐欺によりクレジット契約も取り消すことができる」や「悪徳商法業者とクレジット会社には密接な関係がある」といったものが、現状の既払金返還請求の根拠とされていいます。
現状では、既払金の返還請求を認める判例や学説は多くありませんが、割賦販売法の改正により、一定の条件の下での既払金返還が認められるようになる見通しです。