免責されない債権・ケース

免責されない債権


免責の許可がされると、免責の効力として、借金の支払いが免除されるのが原則ですが、 特に要保護性が高いとされる債権として、免責の効果がおよばない支払い義務がのこる債権(非免責債権) というものもあります。

1.租税等の請求権

破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権国庫収入を確保するという政策的理由から非免責債権 とされています。
国税や地方税、年金、健康保険料等で、財団債権にならなかった租税債権のことです。

2.詐欺等(着服・横領など)によるにより窃取した金銭等の損害賠償請求権

・破産者が、故意や重過失で加えた人の生命や身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権 

・民法に規定される夫婦間の協力・扶助義務に係る請求権、婚姻費用分担義務に係る請求権、 子の監護義務に係る請求権、扶養義務に係る請求権、その他これらの義務に類する義務で、契約にもとづく請求権 

故意に他人に暴力を加え怪我を負わせたなどの損害賠償請求権や重大な過失により人身事故を起こした場合の損害賠償請求権など 

・要保護性が強い請求権 婚姻費用分担金、離婚などに伴う子供の養育費など

3.雇用契約に基づく使用人の請求権、預かり金請求権

労働者の権利保護という政策的理由から非免責債権 とされている。
未払給与、退職金、社内預金、身元保証預り金などの労働債権の請求権

4.破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権

債権者が破産の決定があったことを知っていた場合を除く

5.罰金等の請求権

制裁的意味を有するものであるので、政策上非免責債権 とされている。 
罰金、過料、科料や追徴金、刑事訴訟費用などの請求権


免責されないケース(破産≠免責)

自己破産の申し立てをしても借金が免責されないケースがあります。自己破産と免責というのは別物であって、自己破産の申し立てを裁判所に行い、その上で免責を受けられるかどうかという審査があるわけです。当然免責されないケースもあります。その免責されないケースについてここで、説明していきます。

借金の原因

まず、借金を作った原因です。遊興費、ギャンブルなどの浪費などによって作った借金は免責されないということはよく知られていると思います。ただ、必ずしも免責されないと断言できるものではなく、免責される判例も出ています。さらに実務上、管財手続により、多くのケースで、破産手続開始決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して、裁判所の裁量で免責が許可されています。
実際に免責不許可となるケースは全体の0.1%(1000件に1件)程度というデータもあります。
ただし、そうはいっても、次のいずれかに該当しないようにするのがよいことは言うまでもありません。


1.財産を隠したり、不利な条件で処分した場合
2.自己破産の手続きを遅らせる為に、著しく不利益な条件で債務を負担したり、信用取引で商品を買い入れて著しく不利益な条件で処分したとき
3.一部の債権者に対してのみ返済を行ったとき
4.借金の原因が賭博や浪費であるとき
5.自己破産の開始決定の1年以内に、支払い不能である事を隠して借金をしたとき
6.商業帳簿作成の義務を守らなかったり、虚偽の記載をしたり、その帳簿を隠す捨てるなどの行為をしたとき
7.裁判所に虚偽の債権者名簿の申告をしたとき
8.裁判所の調査について、説明を拒否したり、嘘の説明をしたとき
9.破産管財人や保全管理人の職務を妨害したとき
10.過去7年間において次のどれかにあてはまるとき。自己破産の免責決定の確定、給与取得者再生における再生計画の遂行、民事再生の再生計画の遂行が難しくな った場合の免責決定の確定。
11.破産法で定められている義務を守らなかったとき
ただし、幅広く裁量免責が認められているので、免責不許可事由があるからといって直ちに破産手続きを選択できないわけではありません。

結局免責される、免責されないかどうかという点については、裁判所へ申し立てをする際に提出する書類をどう書くかということに注意する必要があるでしょう。
この点については、債務処理に精通した弁護士や司法書士などに相談し、自己破産したはいいが、免責されないなどどいう事態の無いように、書類を整備する必要があるでしょう。

また、自己破産の前に、不正な資産隠しと思われるような資産の名義変更などの手続きをしていますと、免責されないことになります。
そもそも、自己破産とは資産も何もかも吐き出して裸で出直すという制度ですので、このような不正は許されません。

当事務所は多数の破産事件を取り扱っておりますのでお気軽にご相談ください。